”北極星”は、いつから”北極星”?2015年07月08日

先日ある方から質問を受けました。
 「今の北極星は、いつから”北極星”と呼ばれるようになったのか?」
とても興味深い内容です。

天球の回転軸の北極である「天の北極」の近くにある星を「北極星」と呼びます。現在は、こぐま座α星が「天の北極」から約1°の位置にあるので「ポラリス(北極星)」と呼ばれています。
これが、紀元前3000年頃には、地球の自転軸の歳差運動のために、りゅう座α星トゥバンが天の北極近くにあり、ギザのピラミッドの北側にある通称「通気口」は、このトゥバンの方向に向いていると言われています。

 黄道の北極を中心とした、天の北極の移動図

りゅう座α トゥバンが天の北極近く(天の北極から3°以内)にあったのは、紀元前3500年~前2000年の間。その後、天の北極近くに明るい星がいるようになるのは、こぐま座α星が紀元1500年から。それまでの間は、天の北極を指し示せるような星はありませんでした。

では、いつ頃から、こぐま座α星を「北極星」と呼ぶようになったのか?

すぐに思い出したのは、シェイクスピアの作品『ハムレット』の冒頭で、城壁の夜の番兵が見た幽霊の話のシーン。バーナードーが言います。
 「ゆうべのことだ。
  北極星の西に見える、ほら、あの星が・・・」
シェイクスピアが『ハムレット』を書いたのは1600年頃とされています。つまりその頃には、一般の人も「北極星」といえばあの星、ということを知っていたわけです。

これ以前についてはよく知らなかったのですが、今日読んだ、買ったものの”積ん読”状態(本棚に”立てて”はいましたが ^^; )になっていた『天文学と文学のあいだ』(池内了、廣済堂出版、2001)の中で、コロンブスが羅針盤の針が北極星の方向を指していないことに気付いた話が載っていました。

コロンブスの航海日誌(1492年)
 9月13日の日暮れに磁針が北東のほうへ半目盛ずれ、
 夜明けにはさらに半目盛ずれているのを見つけた。

池内氏によると、
 地磁気について知らなかった時代では、北極星が磁石を引き付けると考えていた。
 いつも同じ方向に見える北極星が、特別な力を持っていると信じられていたのだ。
といいます。

そして『エピソード科学史II』によると、コロンブスは船員たちが動揺しないよう、次のように説明したといいます。
 実は北極星は不動ではなく、小さいが縁を描いて動いているから、
 羅針盤の方向とは一致しないのだと、強引な説明を行っている。
 実際、当時の北極星は半径三度の円を描いて動いていた。

このように、天の北極から3°離れてはいたものの、大航海時代にはこぐま座α星が、北極の方向を示してくれる星「北極星」と知られていたことが分かりました。

それ以前については未調査です。いろんな本を読んでいく中で、新たな発見があることを期待します。

コメント

_ 横溝 高一 ― 2018年05月24日 21時23分41秒

 伊能忠敬e史料館の者です。私も日本では何時から「北極星」というようになった調べていました。明治になってからと推測しています。
 伊能忠敬は「北極星」「北辰」は使っていません。中国古名の「句陳一」を使っています。句陳二(こぐまδ)、三(?)は記録に現れます。
 ここでも書かれているように、北極星は真北(北心)からの離隔が1.6度あり緯度の決定に使えなく、忠敬はほとんど観測していません。最近の研究で分かりました。
 忠敬は緯度のことを北極出地度(ほっきょくでちど、ほっきょくしゅっちど)としているため北極星のことかと誤解されることもあります。経度の語彙も出てきませんが伊能図には京都の幕府改暦所を通る子午線を中度として、1度ごとに経線が引かれていますが、経線と明記していません。里差と言っていたという研究者もいます。

_ KODA ― 2018年05月28日 15時00分03秒

横溝さま、貴重なコメントありがとうございます。

おぉ、伊能忠敬は「北極星」を使っていなかったのですね! それがスゴイ情報だ!!
忠敬が地図作成の測量を行っていたのは1800年頃。こぐま座α星の赤緯は+88°18’。天の北極から1.3°もズレていましたね。

よくTV番組や紹介本では「北極星の位置を測って」と言われます。ネットで検索しても「北極星が使われた」と書かれています。それが、実際は北極星を使っていなかった! これは最近の研究で分ったことなのですね。

最新の情報、ありがとうございます。どこかのサイトなどで見ることはできるのでしょうか?

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